個人情報保護法に対する個人的考察・・・

何が個人情報なのか履き違えている日本 via 高木浩光@自宅の日記

何が個人情報なのか,履き違えている日本を代表するプライバシーマーク制度。
名は体を表・・・さない?履き違えについての考察


図3: プライバシーマークが言う「個人情報」と、個人情報保護法が言う「個人情報」の関係
高木浩光@自宅の日記より

図4: 個人情報保護法における「個人に関する情報」と「個人情報」の関係
高木浩光@自宅の日記より

プライバシーマークが言う個人情報は確かに“個人情報”ではあるが,いわゆる個人情報保護法の保護法益では必ずしも ないであろう・・・
個人情報の保護に関する法律(以下 個人情報保護法には,目的として第一条にこう掲げられている。
第一条 この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人 情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による 基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき 義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする
この文章を読んで個人情報の保護だけが目的だと思う人がどれほどいることだろう? 明確に,目的は「個人の権利利益」を保護することだと記載されている。個人情報の取り扱いについては手段であって,個人の権利利益を保護する・・・したがって個人情報とともにプライバシー等個人に関する情報をも保護することこそが保護法益と言えまいか?

しかし,プライバシーマーク制度の説明においては個人情報保護法は個人情報の取り扱いについて規定されており,プライバシーの保護を目的とするものではないと明記されている。 プライバシーマークを謳いながら,関連法規の保護法益を取り違えているプライバシーマーク 制度にいかほどの存在意義があると思えるだろうか?

プライバシーマーク制度から透けて見える保護法益を取り違えている日本社会・・・
高木氏の日記,注釈56から・・・
個人情報保護法には「プライバシー」との語は出てこないが”その保護法益として個人の 権利利益を掲げている以上,プライバシー等個人の権利に含まれる情報も保護されるべき ものであり,“個人情報保護基本法制に関する大綱(平成12年10月11日 情報通信技術(IT)戦略本部 個人情報保護法制化専門委員会)”の基本原則にあることは当然のことを述べているにすぎないのだろう。
しかしながら,その通り“すべての個人情報 ”を保護することは現実問題として不可能であり,ある程度の閾値を定めているのだろう。

したがって,しゃくし定規に形式的に個人情報保護法の規定を守ることは図4の個人情報を 守るに過ぎず,極言すれば個人に関する情報,つまり本来保護法益たる個人のプライバシー等を考慮 していない無意味な対応とは言えまいか。

PSNによるトロフィー公開(トルネ含む)に対する考察・・・
  • PSNにおいて,トロフィーが公開されることの何が問題なのか?
利用規約で公開されることはユーザーに対して説明済みであり,ユーザーは了承のもと利用しているのだから同意済みの事項であろう,という点についての考察。 確かにSONYが改定する前の利用規約においても“PSNユーザー”に対して“提供”することがあると記載があり,それについてユーザーの同意は得ていると言える。
しかし,そこにはPSNユーザーに対して”提供することがあるとしか書かれていない。これを読んで,誰が世界中に対して必ず公開されると受け取るであろうか?
個人情報保護法には第16条に次のような記述がある。
第十六条  個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない
そして,前条の規定とは・・・
第十五条  個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。
利用目的をできる限り特定しなければならず,その利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱うことに対して,制限が課されているのである。
つまり,改定後の利用規約であっても“PSNのサービスの提供およびPSNのサービスにおけるユーザー体験を向上させる等の目的”を達成するのに,PSN外(非PSNユーザー)にまで公開する必要はなく,少なくともPSN サービスの提供には不必要と考えられる。
あるいはユーザー体験の向上を目的としてPSNユーザー以外にも公開することでそれが得られる可能性は否定できないが,すべてのユーザーがそれにより ユーザー体験が“向上する”とは限らないだろう。しかしながら,その公開範囲, あるいは公開の是非についてユーザーに裁量は必ずしも与えられていないようであり,ユーザー体験向上を目的に必ず公開するということには目的達成への必要性が薄いのではないか?と思える。
そして,これがPlayStation Homeにおいて全世界に公開されてしまっていることは,改定前の規約において同意を得た範囲とは言い難く,したがって利用規約の 改定程度では個人情報保護法に抵触している(かもしれない)状態の改善とはおよそ言えないのではないか?